西洋骨董洋菓子店〜アンティーク〜 12話

自分を誘拐した犯人について心の中にわだかまりを抱え続けて来た橘が、いざ決着を付けられるのかと乗り込んでみれば全くの別件。
それで拍子が抜けたと言うわけでもないだろうが、こだわりが無くなったのは確かなようでこれまで食べられなかったケーキを普通に食べられるようになり、そういう橘を見て思うところが有ったのであろう千影も橘に付きっ切りになるのを止めることに。
この橘の変化の様子というのが、まず客にケーキを勧める際に「自分も大好きだ」とまず言わせてあれ?と思わせておいて小野と橘の会話に繋げる形で表すことにより、客観的に見せるのは上手いと思った。この見せ方のお陰で、橘のこの変化から千影やエイジの行動に変化に繋がっていくのが自然に見えるし。
更にこのことは紛れも無くアンティークの中心に橘がいるということでもあり、誘拐事件に対する心のわだかまりから始めたケーキ屋だけど、もうすでにケーキ屋を続けていくのに誘拐事件は関係無いということでも有るんだよね。
橘を誘拐したと思われる老人とのニアミスと、恐らくは最後の別れにおいてお互いがただのケーキ屋の店長と客として接しているのもこのことを象徴しているのだと思う。
そして最後の小野と二人になってからの二人の会話は、橘の恋人には絶対ならないという発言が逆にいつまでも一緒にいようという殺し文句のようでもあり、この作品らしい良い纏め方だったと思う。
総評としては登場人物の根本的な精神構造に色々突っ込みたくなる点が多々有ったものの、エキセントリックにし過ぎずギャグにし過ぎずという割と絶妙な話の運び方により、途中で飽きる事もなく見続けるのが辛くなることもなく、登場人物の精神的な成長や変わりようを楽しめるドラマに仕上がっていたのが良かった。
演出など総じて大人しめだったけど余り地味ともいう印象を湧かせなかったのは、キャラを見せる方に比重を置いていたからだと思うんだけど、それも上手くはまっていた感じ。ただ作中に出て来たケーキを実際に食べてみたいとは余り思わなかったので、それが裏目に出ていた面も有るとは思うけど。